児童扶養手当法改正の国会審議で参考人として意見陳述

すべてのひとり親世帯に光をあてる支援を


 ひとり親家庭に支給する児童扶養手当について、第2子以降の加算額を増額する改正児童扶養手当法が5月2日の参院本会議で、全会一致で可決、成立しました。
 4月26日の参議院厚生労働委員会では、参考人の意見陳述と質疑が行われ、小河光治・代表理事やNPO法人しんぐるまざあず・ふぉーらむ理事長の赤石千衣子氏(あすのば評議員)らが参考人として出席しました。
 同法では、第2子は現在の月5,000円を最大1万円に、第3子以降は3,000円を最大6,000円に引き上げます。12月に支給される8~11月分から適用されます。2人目以降の引き上げは、1980年以来36年ぶり。第3子以降の加算は22年ぶりの引き上げになります。昨年7月に発表したあすのばの政策提言が実現しました。
 また、今回の参考人の意見陳述や質疑などを受けて、参議院厚生労働委員会での附帯決議では、児童扶養手当の隔月支給や給付型奨学金の創設や授業料減免措置の充実などが盛り込まれ、衆議院での決議内容から大幅に拡充されました。

参議院厚生労働委員会での付帯決議の全文はこちらです
(赤字部分は、衆議院厚生労働委員会での付帯決議から変更点)

 小河代表理事が述べた意見陳述の主な内容は以下のとおりです。


〇子どもの貧困対策の中での最優先課題がひとり親世帯への支援


 ひとり親世帯は、146万世帯で20歳未満の子どもは230万人と推計されます。ひとり親世帯の貧困率は、54.6%にものぼりOECD34か国で最悪です。貧困状況のひとり親世帯は80万世帯で126万人もの子どもが貧困に苦しんでいると思われます。
 一方で、母子世帯の母の就業率は、80.6%で世界でも最上位ですが、正規雇用は39.4%のみで多くの母はワーキングプアです。また、児童扶養手当受給率は、母子世帯73.2%、父子世帯45.9%にものぼり、児童扶養手当は、ひとり親世帯の「命綱」であることがわかります。
 これらの実情からも、ひとり親世帯の貧困率の改善が急務であり、とりわけ貧困状況のひとり親世帯への支援を最優先で拡充することが必要です。さらに、ひとり親の雇用安定とワーキングプアから脱却のために施策の拡充が求められています。

〇とくに経済的な面では母子世帯の困窮は際立っている


 この春、あすのばは、「入学・新生活応援給付金」制度を創設し、197人に3万円から5万円を給付しました。申請者は386人にものぼり1.9倍の倍率でした。申請者の家計状況は、どの家庭も厳しかったため、選考委員の方々とともに断腸の思いで選考しました。今回の給付世帯の最貧層は、生活保護を受けていない母子世帯でした。「生活保護をもらい過ぎ」というわけではなく、いかに生活保護を受けられないか、受けていない人が多いかという現実がよくわかります。
  母の年収75万円(税込)、高2・高1・中1の子どもを抱え、家賃2万5千円の公営住宅に住んでいる世帯の申請書には、このように書かれていました。


 このお母さんから電話がありました。証明書類の提出をお願いしたところ「給料日前で住民票・非課税証明書発行手数料の600円が払えず、給料日まで待ってもらえませんか」という内容でした。また、「給付金はいつ振り込まれますか。制服代の期限が明日ですが、メドがない」など多くの方から同じような連絡を受けました。
  また、東京都では児童扶養手当への上乗せとして「児童育成手当」が子ども一人当たり月に13,500円の支給される手厚い支援があることは、とても家計を支えていることが今回の選考でもよくわかりました。しかし、どの県も同じような制度ができるわけではありません。どこに住んでも同様な支援を受けられる制度が必要です。
 さらに、児童扶養手当受給者の6割が児童数1人であり、「第2子以降の加算」では光が届かない親子が127万人にものぼります。すべての児童扶養手当受給世帯に「見捨てられていない」というメッセージを送るような支援がとても大切です。

〇貧困の連鎖を断ち切る=大学・専門学校進学希望者に進学チャンス


 ひとり親世帯の子どもの進学率は、大学23.9%、専門学校17.8%であわせて41.7%です。一方で、日本における進学率は、大学56.6%、専門学校22.4%であわせて79.0%にものぼります。ひとり親世帯の子どもがいかに大学に進学できないかがわかります。
 また、あしなが育英会の高校奨学生への調査では、3割が就職を希望しており、その理由について質問すると「進学したいが経済的に無理」29.3%、「進学したいが家計を支えねばならない」7.0%であわせて36.3%の高校生が経済的理由で進学を断念しています。
 現在、大学学費と生活費は、国立大学で年間150万円、私立大学では198万円もが必要です。大学生の奨学金貸与者率は、51.3%で貧困世帯のみならず大学進学の家計への経済的負担の重さがわかります。
 貧困状況のひとり親世帯の子どもも希望すれば大学や専門学校への進学のチャンスを与えることは、貧困の連鎖を断ち切る上でとても重要です。そのためには、児童扶養手当の支給対象年齢を現行の高校卒業から大学などの就学中までの延長、それが無理でもせめて20歳まで延長することが進学を後押しし、家計の心配を少なくすることになります。同時に、私立大学や専門学校も含めて授業料減免や住宅費補助など学費・生活費負担の軽減策が必要です。

〇進学だけではなく一人ひとりの子どもにマッチした多様な自立支援を


 高校卒業後、ひとり親世帯の子どもの就職率は33.0%で、日本における就職率17.7%の約2倍です。また、卒業3年後の離職率は、中卒65.3%、高卒40.0%と極めて高いのが実態です。
  そこで、確実に「手に職」をつけられるために、高卒就職者などへの就労給付金などの支援制度の創設も必要です。また、中卒や高校中退者への学び直しや就労支援、フリーターやニートへの包括的な支援の強化も大切です。
 私が多くの子どもたちと接してきて思うことは、子どもたち自身に大切にされた経験が極めて少ない。経済的な困難のみならず、「どうせ僕なんて」など自己肯定観や自尊心などが持てない子どもが多いことが大きな課題です。制度の充実だけでは自立できず、「あなたのことが大切」だという眼差しで寄り添う支援も重要です。進学のみならず自立への選択肢を増やしてあげることや一人ひとりの子どもにマッチした多様な自立支援のしくみをつくる必要があります。

〇いま厳しいひとり親世帯に希望ある「あす」を感じてもらうために


 先日、ある幼い子ども2人を抱えた母子世帯のお母さんのお話を聴きました。「がんが再発して、ステージ4と診断されました。いまは元気だけどこの子たちの将来が不安で仕方ない」と涙ながらにお話されました。前職のあしなが育英会の奨学生は、離別世帯の母が精神疾患で働けず奨学金を申し込むケースが急増しています。ひとり親世帯の親たちは、身も心もズタズタです。子どもだけではなく親にも「あなたのことを大切にしています」というメッセージを発することがとても重要で、それを受け止めて感じてもらえることが希望につながります。
 役所に行ったら、たらい回しにしない「真のワンストップ・サービス」や訪問支援の充実も必要です。支援情報などを確実に届けるしくみの構築も大切です。また、赤石さんも強調した児童扶養手当の支給を現行4か月ごとから毎月への変更もすぐに実施する必要があります。
 さらに、実態把握をさらに充実させるため、厚生労働省で実施している「母子世帯等調査」は5年ごとから3年間隔にすることも重要です。国、自治体、学校、NPO、地域など社会全体での支援を推進させなくてはなりません。あわせて、すべての子どもを対象とした普遍的な支援の充実は、ひとり親世帯の子どもも含めた支援の充実につながります。
 
 その子が肌で感じている痛みに寄り添って温かく接してあげて、しっかり自立できるさまざまな制度を準備し、それを活用することで将来大人になったときには、子どものときの負の経験をバネにして「人の痛みのわかる」社会でイキイキと生きている頼もしい大人になります。私は、30年近くにわたってそういった子どもたちの成長を見続けてきました。だからこそ、私はこれからも多くの子どもたちにとても期待しています。
 ぜひみなさんとご一緒に子どもたちをしっかり育んでいきたいと心から願っています。

小河代表理事の配布資料はこちらです
(本文中のデータの出典は、配布資料をご覧ください)

参議院厚生労働会での審議の動画はこちらです
(2016年4月26日、厚生労働委員会をお選びください)